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人の話を聴くのって難しい

 人の話を聴くのって難しい。
 産業カウンセラー資格取得のために演習を繰り返してきた賜物で、たぶん私は比較的人の話を聴くことができると思っています。意識していろんなスキルを使い分けながら「傾聴」できます。
 でも、難しい。相手と自分との間の川、彼我の川が意外と深くてなかなか容易に渡れない難しさ。
 私たちは、人の話を聴きながら、自分なりの理解をしています。
「なるほど、そういうことね」「かわいそうに」「言いたいことはわかった」とか。
 でも、意外と自分なりの理解が相手の本当の心情と「ソリがあってない」ことが多いです。
 これ、話す方と聴く方、両方の立場で交代してやるとわかるんですが、自分が言った言葉に対する相手の言葉が、微妙に自分の「本当に言いたかったこと」と違うことが多いんです。
 子育ての苦労話に対して「大変ねぇ」と言ったとします。ところが、言った本人は「大変」なんて思ってなくて、楽しさが先に立っていたとか。
 微妙にソリが合わないものなんです。ソリがピタリと合うことは滅多にない。
 話す方も自分の気持ち心情を言葉にして伝えますから、言葉にする段階で変容していることがある。そして、聴く方がそれに対して違う理解をすることもある。さらに、その理解を言葉にして相手に伝え返す段階で変容することも。
 だから、相手が言った言葉そのものをオウム返しで伝え返しても「それ、ちょっと違うんだけど」となる可能性もあるんです。
a「つらいのよねぇ」、b「つらいんですねぇ」、a「う〜ん、そうかなぁ」とか。
 この矛盾・葛藤が実はカウンセリングの肝だったりするんですが、それはこちらに置いといて。
 人の話を聴くのは難しいということです。まず聴くほうが謙虚になっているのが第一。
 話す方と聴く方が同じ立場に立って聴きなさい、と指導されましたが、私にはそれでは不足でした。同じ立場に立つと、どうしてもこちらの「我」がでてくるんです。私の場合。
 なので、私が聴く方の時には、話し手の人を「神様仏様」と思うようにしてました。そうまで想定しないと、なかなか聴けない。そうまで想定して、やっと聴けるようになる。
 やっかいなものです。

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