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「見てきたような嘘を言い」ほめ言葉ですよ!

「見てきたような嘘を言い」
 優れた小説へのほめ言葉。
 歴史小説を読んでると、ここまで分かるわけないじゃん、というところまで書き込んでいる場面、頻繁。
 登場人物の魅力・人間性を伝えるためだったり、物語をおもしろくするためだったり、辻褄を合わせるためだったり。実際、おもしろく納得して読み進めていけるから、すごい。
 波瀾万丈、破天荒、エンターテインメント。
 見てきたような嘘を調理してフルコースのディナーのように、次から次に「ほらどうぞ。お次はこれです。こんなのもありますよ」と繰り出してくれる。私はフォークとナイフならぬ、右手の指でページをめくるだけでこのご馳走を満喫できる。
 予定された結末に向かって突き進む読書。果たしていったい、私は読んでいるのか?読まされているのか?本当に読んでいるのか?
 読まされている快感。波瀾万丈も安心して楽しめる。予測と裏切り。裏切られる快感。騙される快感。
 そして、読了。
 読了後、何も残らない小説もあります。あれだけ手に汗握って読んだのに、何も残らない。見事なほど残らない。通過する小説。真夏の出来事。それも意図的?
 嘘を楽しめるっていうのは、私たち人類だけの特権。
 「歌うネアンデルタール」によると、現生人類とそれ以前を分けるポイントの一つに絵画の存在があるらしい。抽象化するという概念の発生がそこにあるらしい。
 絵も、見てきたような嘘。見てきた以上の嘘。
 世界を抽象化して、またさらにそれを具現化して見せてくれる、原始の古代の中世の現代の未来のアーチストたち。
 私たちはずぅ〜と騙され続けます。

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